【アメリカの企業形態】自身の起業にとってベストな企業形態を知ろう②【法人編】

 

先日に引き続き、アメリカで起業をする際に注意すべき企業形態について解説します。

 

前回述べたとおり、アメリカにおける企業形態は大まかに5つあります。

・Sole Proprietorship

・Partnership

・Corporation (C Corporation)

・S Corporation

・Limited Liability Company (LLC)

 

今回は、5つの会社形態のうち、法人格を有するCorporation (C Corporation)、S Corporation、Limited Liability Company (LLC)について解説します。

 

法人格を有さない、個人事業にあたるSole ProprietorshipとPartnershipの解説については、以下をご覧ください。

【アメリカの企業形態】自身の起業にとってベストな企業形態を知ろう①【個人事業編】

 

Corporation (C Corporation)

 

C Corporationとは、いわゆる通常の株式会社を指します。

株式を購入して資本を投資した株主がオーナーとなり、年に一度の株主総会にて、会社を舵取りする取締役を選出します。

 

選出された取締役を筆頭に、事業を展開し利益を創出するのがC Corporationです。

 

メリット 資金を調達しやすい。

 

C Corporationの一番のメリットは資金を調達しやすいという点です。

 

ビジネスをするにあたって投資資金が必要です。

IT関連のビジネスなどは、ネットとスキルだけで、ゼロ資金でビジネスを始められることもできますが、多くの業種では初期投資が必要です。

 

C Corporationであれば、少額の資金を多数の投資家から得ることができます。

 

メリット 有限責任です。

 

前回、Sole ProprietorshipやPartnershipを解説した際に、無限責任と有限責任についても説明しました。

 

このC Corporationは有限責任にあたります。

つまり、会社が倒産したとしても、オーナー個人の財産には何も影響はありません。

 

無限責任の場合、会社が背負っている負債や賠償金を支払えない場合、オーナーが個人の財産から負担しなければなりません。

つまり、会社が倒産するということは、個人の破産を意味します。

 

ビジネスが大きくなるほど、無限責任の企業形態はリスクが大きくなります。

ある程度の規模のビジネスを想定する場合は、C Corporationをはじめ、必ず有限責任の企業形態を採用するようにしましょう。

 

デメリット 二重課税が発生します。

 

C Corporationの場合、連邦法人税を支払ったうえで税引後利益が算出され、そこから配当が支払われるのですが、配当に対して配当税を支払う必要があります。

会社レベルと株主レベルでそれぞれ税を課されることで、二重課税が発生してしまいます。

 

会社の利益、そして個人の収入を少しでも増やすためには、二重課税というデメリットはとても大きいです。

 

 

デメリット 決算や株主総会のための準備

 

C Corporationのオーナーは株主です。

企業は出資している株主に対して、経営についてしっかり説明をするために株主総会の準備をしなければならず、多大な時間と労力を必要とします。

 

この準備が本当に時間がかかります。

そもそも起業したばかりの人は、何を準備したらよいかすらわからないので、ノウハウを身に着けるところから始めなくてはなりません。

 

小規模ビジネスにはC Corporationは向きません。

S Corporation

 

C Corporationが通常株式会社と訳されるのに対して、S Corporationは小規模株式会社と訳されることが多いです。

 

C Corporationは、小規模ビジネスには不向きな企業形態ですが、それを小規模ビジネス向けに改善したのがS Corporationです。

 

メリット 二重課税とならない。

 

S Corporationは、税法上、法人としてみなさずに課税がされます。

よって連邦法人税を支払う必要はなく、C Corporationの二重課税というデメリットが解消されたことになります。

 

法人格を有するCorporationであっても、実際は個人事業と同程度のビジネスを行っているケースはたくさんあり、そういった場合は個人事業(Sole ProprietorshipやPartnership)と同等の租税になるべきだという考えから、このS Corporationは生まれました。

 

株式を発行して資金を調達したいけど、二重課税を回避したいという小規模ビジネスの場合、S Corporationが最適な企業形態です。

 

メリット もちろん有限責任です。

 

税制上は法人格を有さない扱いがされますが、法的には法人です。

 

そのため、C Corporationと同じく有限責任です。

 

 

デメリット 株主数は75名まで。

 

もちろんデメリットもあります。

そうでなければC Corporationの存在意義がなくなってしまいます。

 

C Corporationは株主数に制限はないのですが、S Corporationは小規模ビジネスを前提にしており、株主数は75名までと定められています。

 

 

デメリット アメリカ市民権or永住権が必要。

 

S Corporationの株主は、アメリカ市民権もしくは永住権が必要というルールがあります。

 

例えば、日本で既にビジネスを展開している企業がアメリカ進出する場合、アメリカに在住しているわけではないので、S Corporationという企業形態は採用することができません。

 

連邦法人税を支払わなくてよいというメリットは大きいですが、市民権か永住権を持っていなければならないという条件を満たさなければなりません。

 

Limited Liability Company (LLC)

 

近年、最もポピュラーな企業形態です。

それぞれの企業形態の良いとこ取りをした企業形態と言われており、ハイブリッド型といえます。

 

ちなみに、私はLLCを採用して起業しました。

LLCの起業について知りたい方は下記をご覧ください。

【アメリカで起業】LLCの設立方法を実体験をもとに説明します(前編)

 

メリット 二重課税は発生しません。

 

S Corporationと同様、税制上、法人として扱われません。

そのため連邦法人税が不要であり、二重で

 

 

メリット もちろん有限責任。

 

C CorporationやS Corporationと同じく、有限責任です。

 

 

メリット 市民権・永住権がなくとも設立可能です。

 

スタートアップの企業にとっては、S Corporationは良い条件なのですが、市民権もしくは永住権を持っていなければならないというハードルがあり、日本企業や、永住権のない日本人にとっては現実的ではない企業形態です。

 

一方でLLCは市民権や永住権がなくとも設立可能なので、日本人がビジネスを開始する場合、大半はこのLLCを選びます。

 

デメリット 歴史が浅いため法的な事例が少ない。

 

デメリットというデメリットはないのですが、強いて言えば、企業形態として歴史が浅いため、いざ法的な問題に発展したときに、過去の事例が少なく不透明な部分が多いということです。

 

起業をすると、納税をはじめ様々なレポートを対応することが必要です。

その結果、本人は全く悪気はなくとも、不備や不正が発覚し、法的な問題に発展してしまう可能性もあります。

 

そんな時に、LLCの場合は、歴史が浅いため、不透明な部分が出てくる可能性もあります。

 

 

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まとめ

今回は法人格を有する企業形態として、C Corporation、S Corporation、LLCについて解説しました。

 

大規模なビジネスの場合はC Corporation、小規模なビジネスの場合はS CorporationまたはLLCが良いです。

 

アメリカ市民権や永住権がある人であればS Corporationで良いですが、日本人起業家は市民権や永住権を保有していないケースが多く、LLCが採用されることが多いです。

 

ケースバイケースで選ぶべき企業形態は変わりますが、スタートアップであればLLCを選択することをおすすめします

あるいは、趣味程度に活動するのであれば、前回紹介したSole ProprietorshipかPartnershipです。

 

一点注意しておきたいのは、LLC、Sole Proprietorship、Partnershipを設立するのはとても簡単にできます。

一時間もあれば申請できるでしょう。

 

よく会社設立を会計士や税理士にお願いしてしまう人がいると思いますが、よっぽど潤沢な資金があるのであれば別ですが、資金に困っているのであれば、自分で調べて設立することをおすすめします。

会計士、税理士など専門家の見積はぼったくりです。

 

わからないことは専門家に任せるというのは大切ですが、自分で調べてこなすことも大切です。

内容をしっかり見極めて、無駄な時間やコストを抑え、ビジネスを開始しましょう。

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